Saturday, December 25, 2010

本八戸



翌12日。6時過ぎにホテルを出ると、軽く雪が積もっている。向かいのホームで一休みしている急行はまなすを眺めつつ、いまや旧東北本線となった青い森鉄道線で八戸に向かう。昨日買い込んでおいた工藤パンが美味い。浅虫温泉あたりから見える陸奥湾は大いに荒れ、どんより暗い雪の景色はまさに小島一郎の津軽を思わせた。次第に空が穏やかになると八戸に到着し、八戸線に乗り継いで陸奥湊で下車。朝市が休みの朝の陸奥湊をふらふら歩くと、ほやが転がっていた。スナックの長いトンネルを抜け、トタンの住宅の間を抜けると陸奥楼が出現。営業している旅館の新むつ旅館だが、日曜の朝はひっそり閑としている。小中野新地を後にバスで本八戸の中心街まで進み、いくつか横丁を廻り歩く。JRの宣伝で吉永小百合さんの訪れた横丁は、吉永さんが実際来る余地など残さないような深い味わいである。「喫茶ぽん」では日曜でパン屋が遅れてるということでモーニングを食いそびれるが、メシ時に来たらと狙っていたハムカレーに舌鼓を打つ。青森に続いて八戸にも寄るべき喫茶店ができた。本八戸駅の前を通り過ぎて、壕に守られた現役のストリップ劇場である八戸マノン劇場の佇まいをとっぷりと堪能し、折返し青い森鉄道で青森に戻った。



閑散とした青森駅の西口を出て、映画『八甲田山』の青森歩兵第5連隊こと青森市の森林博物館まで、小雪の中を見学に赴く。思わず『飢餓海峡』で使われた森林鉄道の車両まであったのには吃驚した。駅に引き返し、最後に青函連絡船の八甲田丸へ。連絡船の停泊する青い海公園では、休憩所となっていた引退車輛のキハがさらに廃屋となって厳かに眠り、津軽海峡冬景色がとめどなく広場に鳴り響いている。船内では素敵なマネキン船長に誘われ、グリーン席や寝台室を巡る。連絡船にはやはりだだをこねてもガキの時に足を伸ばしておくべきだった気もするが、そのような感じで乗った特急などの記憶も今やまったく曖昧である。船内はブリッジや機関室など見せ場が絶えないが、何と言っても見学コースの最後に控える車両甲板にとどめを刺される。新青森駅の土産売り場は大変な賑わい。おまけに駅弁も完売しているので、駅蕎麦をすすって帰路につく。例によって携行本『八甲田山死の彷徨』は完全に開かず。