Sunday, March 31, 2013

黒磯



黒磯駅も乗継ぐばかりで、駅の外に出るのは初めてである。昔は全列車の停車する駅だったので、往時の賑わいはさぞやと想いつつ、ぽつぽつ見える小粋なスナックにその面影を感じながら、古本屋の白線文庫に向かってしばし歩く。出来れば次の快速で帰りたいと思っていたので、時間を気にしながら棚を一通り眺め、『世界の旅3 ドイツ・スイス』というハードカバーの旅行本を購入。記事の冒頭、香川京子がベルリン映画祭でドイツを訪れた時の小文がなんとも嬉しい。恐らくこれは『悪い奴ほどよく眠る』がコンペティションに出た年のことだと思われ、とすると、その時の金熊賞がアントニオーニの『夜』で、銀熊賞は『女は女である』。ということで、香川さんがヴィッティやカリーナと競演していたベルリンでのひとコマなのであった。

駅前に戻り、老舗和洋菓子店の明治屋にて洋菓子のボッカ(牧歌)をその素敵な包装に堪らず購入。もう少し郡山から乗継ぐ人々の波がやってくるまでは時間があるので、「冷しかけそば」の文字にひかれて立食い蕎麦の喜多に入ると、まだ冷しは始めてないとのこと。駅までの急ぎ足で結構体は温まってはいたものの、せっかくなので熱いかけそばを啜って帰路についた。やはり黒磯から直通の快速は楽であった。

Saturday, March 30, 2013

青葉城恋唄



3月24日。朝一で仙台から東北線の利府支線に乗ってみた。途中の新利府は車両基地の町。新幹線がずらりと並んでは、新しいこまちの姿も見える。この線は利府の住民用というよりJR職員用なのかとも思ったが、利府からの折り返しは地元の方でいっぱいになるし、本数も意外に多い。乗ってきた列車は折返しで福島行となり、そのまま乗車して仙台の1つ先の長町で降りる。小体な長町のマーケットを鑑賞し、郡山餅店で味付けおにぎりを買い食いする。

長町からは地下鉄で勾当台へ。定禅寺通を西に進み、古本屋のマゼランが開店するまで、せんだいメディアテークで少し時間をつぶす。ミュージアムショップの民芸品に目移りしてグルグルと何周もしてしまい、結果、どうしたらよいのかわからなくなって岡本太郎のLEDガチャを1回だけ回すに終わる。この日は薬物防止キャンペーンのイベントが開かれるらしく、ご当地アイドルだというテクプリという女の子らがリハーサルでエレクトロな青葉城恋唄を歌っていた。そろそろかと思ってマゼランに伺ったものの、まだ準備中で掃除機をかけている状態だったで、またの機会ということにする。

定禅寺通から国分町を抜けて一番町を新刊書店の金港堂まで歩む。店内には昔ながらの木製本棚の島が並び、天井からは年代物の分類板が下がっている。岩波文庫でロシア文学とかのインデックスを見るのも久しぶりだ。こんな素晴らしい文化財は守っていかねばなるまい、などとつい年寄扱いしてしまいそうになるが、検索機も備え付けてあれば棚も活き活きとした本屋であり、全くもって余計なお世話なのである。とりあえず岩波文庫から室生犀星の『或る少女の死まで』を購入。

昼食に伺おうと思っていたオジーノカレーヤの開店までの時間潰しに、今度は東北大学の中をぶらぶらして魯迅の像などを見かける。魯迅さんが学んだという階段教室あたりの古い建物は現在はジェンダー研究所になったりしている。キャンパス内でご隠居様方の撮影会がはじまってしまったところで、開店を前にオジーノカレーヤへ。ひっそりとした玄関まわりには開店しそうな雰囲気がしないので、ウロウロと覗き込んでいると玄関の引き戸が開く。営業されるのですかと尋ねると、早い時間は予約でいっぱいで一時過ぎならとのことであった。ということで残念ながらパス。

オジーノカレーヤで昼を食うために仙台の出発を遅らせていたこともあり、何かしらオジーに行かなかったメリットが欲しかったため、一本前の電車に乗ろうと急いで仙台駅に戻る。そんなに仙台駅に来ているわけでもないのに、何故か仙台駅で立食い蕎麦になるのは三回目である。白石行の車窓から蕾になりかけの遠大な桜並木が見えて、あれが一目千本桜かと振り返る。珍しく福島からは黒磯までは直通の便であった。

Friday, March 29, 2013

仙台



福島を出た列車は、貝田駅にかけて少しづつ勾配を上り、東に広がる福島盆地を見渡す。白石付近では強風だとのことで最徐行で進み、30分ほど遅れて終点仙台に到着。仙台ではひとまず古本カフェの火星の庭に訪い、『映画ディテール小事典』(川本三郎)、『京都インクライン物語』(田村喜子)、『伊藤晴雨物語』(団鬼六) の三冊を購う。一番町を抜けては文化横丁に至り、早めの夕食には餃子の八仙へ赴く。午後7時前の店は既に満席で、しばしカウンターが空くのを待つ。焼餃子とチャーハンを頼むと、飲み物がお茶でいいのか確認され、「茶」を聞き損なってしまったあげく「チャーハンで」と繰り返してしまうから全く下戸は嫌である。八仙のカウンターの中は家族総出。指揮を執るお婆さんの下、お孫さんも4人ほど動員され、戦場のような注文を捌いていく。餃子は多分今までで一番美味かった。ここはチャーハンなしで焼き2・水1とかでもよかったかもしれない。つまみのクラゲとかも無性に美味そうで、飲めないけど紹興酒の熱燗の器もひじょうにそそられるものがあった。

ついでに壱弐参横丁をぶらっとして、鉄塔文庫を発見するが、「古本と立ち呑み」と言われると下戸には些か敷居が高くてスルー。ぶらぶら宿に向かう道すがら、街の映画館の桜井薬局セントラルホールをのぞいていくと、見たいと思っていた大寅興行社のドキュメンタリー『ニッポンの、みせものやさん』が翌日からの上映だったのでほぞを噛む。とぼとぼ駅まで戻り、白謙のミニ笹かまを購入してから投宿。

Thursday, March 28, 2013

福島



黒磯発の二両編成は白河で既に満席。郡山からの福島行も引き続き混み合っている。乗換も含めて何度も立ち寄っている郡山に比べ、これまで縁の無かった福島は、駅の外に出るのも初めてである。ささやかな狸小路のアーケードを見上げ、東口の歓楽街を歩く。浮世風呂を名乗る特殊浴場が、ボイラー点検で休業していることに妙に感心しつつ、荒廃した新町ビルのあやうい美しさに思わず溜め息をつく。腐りかけのものが美味いというのと廃墟趣味に共通するものがあるのかは一瞬考えてやめた。

洋食屋のキッチンカロリーが臨時休業だったので、メシを食った後だと無理かなと思っていたオジマパンのホットケーキをいただくことにする。パンの方はきれいに完売である。大盛で鳴らすきくや食堂は厳しいにしても、まだ少し腹に余裕があるので、県庁のもみじ食堂はどうかと様子を伺ってみるが、こちらも営業していない。止むなく腹六分目で夜に備えることにした。県庁前の西沢書店にて、落語フェアで積まれていた正岡容『寄席囃子』を購い、駅前の中合百貨店内の岩瀬書店では、なんとなく佐藤泰志の『海炭市叙景』を購入して福島を後にする。創業100周年を越えている岩瀬書店のブックカバーは創業70周年記念時のものを復刻した素敵なブックカバーであった。

Wednesday, March 27, 2013

白河



3月23日。先週に引き続いて18きっぷで東北本線を北上する。先日ぶらついた宇都宮をやり過ごし、今週はさらに北を目指す。郡山行の列車の中では、18族と思われる親切そうなお爺さんが仙台へ安く行く方法を二人連れの少年にコーチしているものの、『京王電鉄のひみつ』を読み、熱心に日本地図へ書き込んでいる少年らのほうが、その辺には精通していそうだ。

都内ではすっかり桜も満開となったが、奥州に至って、まだまだ肌寒い白河をぶらつく。小振りながらも味わい深い新蔵のスナック街を抜け、谷津田川を渡って今暫く続く向新蔵のスナック街を過ぎると、小山になった公園が現れる。頂きに及び、北に小峰城を望むと、ホケキョの声もする。麓の線量計は0.190μSVを示している。



商店街に戻り、山田パン店で菓子パンと酪王カフェオレを買い込んで小峰城へ向う。崩壊した石垣を修復中で天守には近付けない小峰城の二の丸に佇んで、あんパンを齧る。ポツンと御衣黄などもあるがまだ蕾にも早い。

Wednesday, March 13, 2013

辛夷



もう辛夷が咲いているなぁと武蔵野の森を見ていた。