あわら湯の町駅前のだだっ広い広場の先には、いきなりストリップ劇場のあわらミュージックの姿が見えた。とにかく、まずはこじんまりした温泉街を一回り。温泉旅館の一角に設けられた大正ロマン館という小さなギャラリーでは『越前竹人形』関連の資料が展示されており、しばし若尾文子のスチルなどを拝見する。映画化されたもの以外でも、S39年の香川京子のラジオドラマ版とか、S48年の小川真由美の舞台版などには興味が惹かれる。ただ現在の芦原の町には玉枝の時代を思わせるようなものは一切見当たらない。入口の地面が尋常でない壊れ方をしたアパートの表札を見てみると「ロシア人第二寮」と記されている。
温泉街の外れの宿に投宿して小憩したあと、夕食は外で越前そばをいただいた。風情というものには乏しい温泉街ゆえ、すぐに再訪する機会には恵まれなさそうな気もするので、ネオンが灯っているうちに、夜のあわらミュージックの姿を瞼に焼き付けておこうと思ったが、面倒なのでやめてしまった。