9月7日。賑わう朝風呂に軽く浸かって芦原温泉を立ち、未乗の越美北線を乗りに福井駅に出る。思いのほか二輌編成の越美北線であったが、一輌は越前大野で切り離すようだ。途中、一乗谷で下車していく観光っぽい方々が結構いらっしゃる。老婆心ながら、278haの一乗谷遺跡をそんな格好で大丈夫かと心配になる。列車が山間に至ると、次第に雨が降りはじめ、林間に靄が立ち上がるのを見て、やっといつもの越前にやってきたという実感を抱いた。
越美北線の路盤にはいささか不安を誘われるので、少し強雨になるとすぐにでも止まりそうで怖い。下り列車が終点の九頭竜湖駅に着くと、数人は降りて行くのかと思ったが、全員が九頭竜湖で折り返すようだ。自分もその一人とはいえ、日中に2本しかやってこない列車に備えた駅前の物産店など全く肩すかしな様子で、いささか気の毒になる。ただ、その割には熱心なテツと思われるのも15人中の2人ぐらい。鉄道にこれっぽっちも興味がなさそうな子をつれて越美北線をただ往復する親っていうのはありなのかと思ったりもするが、子供が無理についてきたような宮脇俊三のことなどを思い出した。そんなに写真を撮りまくるのなら、ガラケーのカメラで済ますのはどうなのかとか、他にも色々気にはなるのだが、こっちも全く人のことを言えた義理ではないのだろう。上り列車は越前大野でふだん使いの人々で満席となって、少し気が紛れる。沿線の家々は青黒い瓦が目立った。
福井駅に戻ってからは北陸本線で金沢へ向う。ここら辺りでは、まだまだゴジラ松井の勇姿が沿線の看板を飾っている。14時を過ぎ、列車は終着の金沢へ。まずは軽く駅前ビルの回転鮨にて、のどぐろ、白えび、ほたるいか、がすえび等をつまむ。金沢では21世紀美術館だけバスに乗ってささっと見てくるつもりが、なかなかバスが進まない。そういえば、前に金沢へ来た時は、自適に自転車で周遊していたんだということを思い出す。21美のフィオナ・タンの展示はとても素敵なものであったが、映像作品は否応無く時間を要するので、後ろ髪を引かれながら、中途退場を繰り返す。とりあえず、雨まじりのタレルの部屋も一興であった。
個人的に金沢といえばココという純喫茶ローレンスにも再訪したかったが、時間的に不安だったのでパスし、駅の不室屋カフェで小憩。おかげでゆっくり駅ビルの土産屋などを漁ることはでき、松葉屋の羊羹や圓八のあんころは確保することができた。そして、駅スーパーの惣菜コーナーにハントンライスがあったのに思わずグっときたのだが、飛行機で持って帰るのかと思うとつい二の足を踏んでしまうのだった。しかしやはり買うべきだった気がして、晴れてまた次の課題ということにする。