日田彦山線を後藤寺で乗り継いで田川伊田で下車すると、プラットホームからも「さぞやお月さん煙たかろ」と唄われた三井炭坑の二本の煙突が見える。改札を外に出ると、先日世界記憶遺産に選定された山本作兵衛を祝す断幕が張られていた。伊田の素敵な商店街をぐるぐると徘徊し、かつて駅の西部に広がっていた松原の炭鉱住宅跡を訪れる。6月末の新聞記事では「昨年20棟が解体されて14棟が残り、12年度までに事業を終える計画」との話だったが、純粋な住宅跡はもう最後の1棟を残すのみ。既に建て変わった団地を背に広大な空き地にはトンボばかりが舞っていた。しばし佇んでは気を取り直し、煙突を目印に石炭記念公園へ。公園内にある石炭歴史博物館には、一昨年に目黒美術館の炭坑展でも見た山本作兵衛作の絵画が所蔵されていて、晴れて世界記憶遺産に選定された作品に再び見えることとなった。「斜坑」という店名に惹かれて訪ねた蕎麦屋は残念ながら売切御免ということだったので、駅に近い喫茶店でホットサンドを軽くつまんだ。
伊田からは日田彦山線で終点の小倉まで。小倉へは2年ぶりで、前回うろついていて気になった鳥町食堂街の赤ちゃん食堂に赴き、焼うどんなどを食す。カウンターでプラスチックの総菜パックをつまみにビールを召し上がっている「お父さん」が、店内のテレビで流れるパンチパーマ発祥の地は小倉という話題に緩く突っ込んでいる。「お父さん」は軽く注意されながらも、第二ラウンドに出かけて行った。ちなみに焼うどんも小倉発祥とされるものの一つ。食後は京町あたりを素見そうかと思ったものの、かなり本気の町並みを前に弱気の虫が出て適当に切り上げる。小倉名画座は相変わらず健在。