Friday, December 23, 2011

宇部



12月15日。閑散とした早朝の飛行機は、強い向い風のため、僅かに遅れて宇部空港に着いた。路線バスですぐの宇部新川に出てからは、駅周辺の飲み屋街をブラブラとひとしきり次の小野田線の出発まで時間を潰す。スナック街の谷間からは宇部興産の煙突がのぞき、そこから煙の白くたなびく様が詩情溢れることこの上ない。工業地帯を行く小野田線は、小野田港あたりの車窓が甚だ素晴らしい。小野田駅の観光案内の看板には、周辺の雀田駅の名物として、クモハ42を描いたものが残されている。小野田駅からは山陽線で宇部駅に出て宇部線に乗り、再び宇部新川駅へ戻る。



そろそろ昼時だというのに、アーケードの銀天街はあまりにも薄寂しい。これでは当たりを付けていた食堂もやっていないだろうと、歩みをゆるめて商店街をゆっくり進む。アーケードを抜けて、いよいよ寂寥としてきた辺りで辿り着いた食堂は意外にも暖簾が下がっていた。ただし、まだ準備中の風情でもあるので、やっているのか尋ねてみる。どうも肯定はしているようなのだが、おかみさんが何と言っているのか全くわからない。何となく興奮したやりとりが落ち着いてみると、自分を親類のなんとかちゃんの彼氏と見間違えたらしいことがわかった。ご近所さんらしい婆ちゃんも一緒になり、ビールジョッキ片手に「よう似とる」とひたすら繰り返す。昨日倒れたとか言いながらビールを飲んでる婆ちゃんを少したしなめると、「仕事中じゃなければあんたにも一杯おごっちゃるのに」と一向に気にしない。おかみさんは注文したヤキメシを焼く間中もずっと「よう似とる人がおるもんじゃのう」と一人ごち続けているので何だかコワイが、おそらく善く善く似ているのだろう。ついつい話の流れでU興産の人ということになり、今度は飲みにきますということになってしまった。