12月21日。北に向かって羽田を離陸した機体が岩国に向けて右へ旋回すると、眼下には猿島、江ノ島、初島に続いて、芦ノ湖が現れた。機内のアナウンスはこの日が冬至であることを告げている。米軍基地と滑走路を共用にして開港した岩国空港は、開港から既に1週間が経過し、もうすっかり落ち着いたように見える。迷彩の人が一人突っ立っている姿を滑走路に見かけたが、他に全く軍の気配は無く、空港全体は大普請中である。こじんまりしたターミナルの売店には地酒の獺祭がずらりと並んでいた。
バスで至近の岩国駅に出て、駅前の寿栄広食堂にて中華そば。呼出マイクで注文を伝えるおばさんの棒読みな具申が、賑わう店内で虚ろに響いている。電車に乗る前に、少しだけ駅周辺のスナック街を廻ると、米軍を歓迎する看板がちらほら見える。わざわざ「日本人は3000円で飲み放題」という設定があるのは、米兵だとそんなもんでは間尺にあわないということなのだろう。錦帯橋と白蛇はまたの機会ということにして、広島方面へ向かう山陽本線に乗り込む。純喫茶パールのなくなってしまった広島は素通りし、そのまま呉線に乗換えて軍港呉へ向かった。