2月9日。先日、ひどくゴミ箱が散乱して荒んだ様子を目にして、高速道路のバス停というのは、案外路上生活の穴場なのかもしれないとも思ったのだが、朝ともなると引っ切り無しに甲府や松本に行くバスが発着し、日中閑散としていた郊外のバス停も、ポツポツ利用する人の姿が見える。連休初日の高山行の朝便は、2台を出して運行するほどの賑わいだ。
昨年末に起きたトンネル事故の影響で、遅延は必至だと覚悟して乗車した高速バスが、笹子トンネルと思われる隧道を何事も無かったように過ぎる。不思議に思って調べてみると、昨日をもって無事に復旧していたらしい。途中、諏訪湖の氷上でワカサギ釣りをする人々を見下ろしながら、おやきをつまみ、バスは松本で高速を降りる。安房峠まではダムに次ぐダムを過ぎ、トンネルに次ぐトンネルを抜ける。平湯温泉で再びの少憩を挟み、高山へは定刻通り到着した。
高山での昼食は飛騨牛のハンバーガー。店内に貼られたフライヤーによると、高山では33年ぶりだという三上寛のライブが翌日に行われるという。ひどい賑わいの古い町並みから逃れるように、ひっそりとした高山城跡の方に向かい、千里眼研究の福来博士記念館を訪ねて、慎ましい超心理学研究の展示を静かに拝す。軽く散策した後は、喫茶ドンにて珈琲。その素晴らしい佇まいは、入口に掲げている1963年の暮しの手帖のキリヌキに見られる風情を、ほぼそのまま保っているように思えた。(暮しの手帖のBNを調べてみると、第72号・1963年WINTER号に「山のむこうの町 飛騨高山」という記事があった。)