高岡駅から今度は南に向かって城端線。途中、福光駅で下車して充実のスナック街をぐるりとし、再びハットリくん列車と相見えて終点の城端駅へ向かう。晴れ間を覗かせながらも断続的に降る雪の中、古い町並みをひと回り。再び城端線を高岡に戻り、喫茶「くらうん」にて小憩。こちらは階上の洋食部などへの年代ものの各種サインがいちいち名品揃いで素晴らしい。最後にブラックラーメンで締めて高岡駅に戻ると、駅前では遠隔操作事件の容疑者が逮捕されたという読売の号外が配られていた。
帰路は特急はくたかと上越新幹線を乗継ぎ。暇つぶしにJR車内誌のトランヴェールをぱらぱらめくってみると、高岡育ちだという風吹ジュンさんの記事がある。45年前に離れて以来一度も足を踏み入れていない高岡に、還暦の節目に中学の同窓会に参加したそうで、当時は高岡もずいぶん賑やかだったという感想となる。ということで、やはり地元の方々にとっては、少なからず陰気な街になってしまったということになるのかもしれない。
雨まじりの雪の中を歩いているうちに、ベコベコにしてしまった文庫本は、いつものように道中繙かないまま持ち帰った。高岡の伏木の廻船問屋で生まれた堀田善衛が、幼時の思い出を描いたという『鶴のいた庭』を収録したアンソロジーだったのだが、一体いつ読めることだろうと思いつつ、また伏木に来る時にでも持って行くことがあるかもしれないと思うのだった。