山頂からの道沿いに次々と現れる蒸ノ湯や後生掛などの温泉にも引かれつつ、そのまま八幡平を西側に降り、鹿角の市街に入る。鹿角ではまず史跡尾去沢鉱山を見学。ガランとしたテーマパークの奥深い坑道の入口に立つと、すっと冷気が襲ってきた。切符売場のお姉さんは13℃ぐらいだから上着を着て入れという。出迎える小熊のキャラクターの「鉱太」はやたらかわいい。長い坑道の奥には人形鉱夫が思い思いに休憩していた。コースの最後に見学者を送出す子供の合唱が耳に残り、後で調べてみると北原白秋作詞・山田耕筰作曲の尾去沢小学校の校歌であった。
テーマパークから少し離れ、製錬所や製鋼所などの産業遺産コースも廻ってみる。彼方に見るコンクリート柱の骨組みだけとなった山麓の選鉱場跡は巨大な神殿のようでもあり、眼下に見える円形の製錬所はコロッセオの遺跡のようにも見える。花輪の市街に入って車を止め、あたりをつけていたコーヒー&パーラーヨコハマで夕食。店内には巨大な横浜港の絵がかかり、中空にはカモメが二羽飛んでいる。BGMはずっとサザン。ご主人はヨコハマからやってきたということで、つまり伊勢屋とかみたいなものだろう。豊富なメニューに目移りしたが、ピラフに生姜焼きがのった「ヨコハマグルメ」が実直で美味い。来客写真の中にはヨコハマ黄昏の五木ひろしの姿があった。
真っ暗な山道を地元の車に煽られながら十和田湖まで進み、湖畔の宿に投宿。暢気な格好で参上したものの、お仕事ですかと尋ねられて、少し恐縮する。旅装を解き、巨大な露天にダラダラと浸かる。夜になると部屋はまだ寒いぐらいであった。