福生に住んで、生まれて初めてプロパンの世話になり、特に何も考えずにガス屋と契約していた。町中で各戸のボンベを見るにつけ、よくこれだけ色々な会社がプロパンで商売しているものだと感心させられるが、それぞれガス代が全然違うのだという。ネット上では、安い値段で契約をとって値上げしていく例も多々報告されているが、実際かなりの価格差があって驚かされる。
古い福生新聞を見ていると、「マルヰのプロパン」というガス屋の広告があった。マルヰというのは、このあたりでは古いガス会社なのだろうと思ったら、元々は岩谷ガスのブランド名から由来しているものらしい。
家庭用のプロパンはシェアトップの岩谷ガスが、昭和20年代に「マルヰプロパン」として日本初の家庭用LPGを販売したことに始まる。全国のマルイと名のつくガス会社は、必ずしも岩谷の子会社というわけではなく、代理店みたいなところも多いのかもしれない。また、岩谷創業家の長男が別途設立したのが、関東でシェア2位のニチガス。2009年に兄弟会社の岩谷から、ガスの供給を止められるという複雑な関係でもある。ちなみに、福生の都市ガスは、東京ガスではなく、武陽ガスによるもの。
不意にガスボンベの交換に遭遇すると、『海炭市叙景』のことを思い出したりする。そして、切なさにおそわれながら、思わず足の指を縮こませてしまう。そういえば、函館にはもう10年行っていない。