Wednesday, August 08, 2012

浅野川



再び自転車に乗って、尾山神社前のスナック街を流し、浅野川まで赴く。泉鏡花記念館で小村雪岱による装丁本などをざっと見て、泉鏡花記念館文庫と小村雪岱の葉書などを購う。主計町を一巡りしてから、浅野川沿いの宿に荷を下ろし、ひがし茶屋町をぶらつく。いい香りに誘われてのぞいてみた糀の店は、 商売っ気よりもギャラリーと憲法9条を守る活動がメインのようで、あまり買物するような雰囲気ではない。夕暮れの浅野川沿いを歩いていると、浅い川底にひっくり返る蟹の死骸が沈むのが見えて、鏡花の金沢を感じた。

日暮れに至り、洋食屋の自由軒にて日替り定食の夕餉。ローストポークと魚のフリッターの日替り定食は、なかなか丁寧な仕事ぶりである。少し混み合ってきた頃合いに、満を持してといった趣で大御所のお婆さんが登場する。暴君らしき大御所の青いトレーナーに黄色で描かれた巨大な文字が、一瞬「Mr.Bater」に見えて目を見開いたが、よく見たら「My Better」だった。どちらにせよ、素敵な着こなしではある。家族連れの常連さんは、教師をしている娘が甲子園予選準決勝の引率に行っていて今日は来れないという話をしていた。試合は残念ながら強豪の星稜高校に負けたらしい。

スーパーで羽咋鳩麦茶と河北潟ヨーグルトを買って宿に戻る道すがら、「働いて飲む、働いて飲むんだ」と噛みしめるように呟いている哲学者とすれ違う。浅野側沿いの宿は、目の前に川床があるなんて風流な宿だなと思ったのは早計で、ひじょうにうるさくて参った。騒音対策がてらにテレビをつけると、折しも「能登金沢ストーカー連続殺人の闇」なる2時間ドラマを放映している。さっき歩いてきた浅野川の橋を安達祐実が渡り、ひがし茶屋の自由軒の前で船越英一郎が聞き込みをしているのを見るのはなかなか楽しい。夜半を前に何とか宴もお開きとなり、9月のカナザワ映画祭に来日するというクリスチーナ・リンドバーグを思いながら、荒木一郎の「りんどばーぐスペシャル」などを聴きつつ眠りにつく。