Thursday, August 09, 2012

輪島



7月28日。6時起床。テレビをつけるとロンドン五輪の開会式で、クルーザーに乗ったデビッド・ベッカムがタワーブリッジを潜り抜けている。仄かに朝餉の昆布出汁の香りが漂う早朝の宿を立ち、浅野川橋から金沢駅に向かうバスに乗る。車内には「こんな時代だからこそ労働組合が必要です。連合石川は〜」と放送広告が流れている。金沢駅前は、今日もあつうなるぞというより、朝の6時から32℃である。能登もずく海苔の佃煮のおにぎりなどを買い込み、輪島行の特急バスに乗って日本海沿いを進む。おにぎりはどうということもなかったが、加賀棒茶がどこでも飲める環境は羨ましい。車窓を眺めていると、どの行先案内板も最終目的地が輪島なのに、それでも輪島に行く鉄道は無くなってしまったのだと痛感する。輪島駅前から歩いて朝市通りに向かうと、オリカ・グリーンエッジ・ジャージのサイクリストが蕎麦屋に入って行った。「朝市だけですよ暑いの。後はどこも涼しい。エアコンが効いてて。」とは、お婆ちゃんらに混じって比較的若手で元気の良い売り子のおばちゃんの弁である。流石に輪島の朝市通りは、良さ気な漆器屋も数多並んでいるが、つい賑やかに通りは避けて海辺に向かってしまう。航空写真で見て気になっていた大テトラポット地帯は国土交通省の立ち入り禁止区域であった。



輪島からの帰りはバスで七尾線の穴水駅へ向う。暇つぶしに先ほど朝市で貰ったチラシを取り出してみると、「輪島で13代続く小西家の小西由香が漆器に名前をいれます」と、可憐な作業風景が写されている。ちょっと嫌々ながらに撮られている感じがなかなか好印象で、そんなことなら入れてもらえば良かったか、とも思ってしまう。穴水駅からはのと鉄道の七尾線。二両編成ののと鉄道は、先頭が貸切の永井豪記念館車輌で、後ろは『花咲くいろは』なる萌えアニメのラッピング車両というなかなか痛い編成である。花咲くいろは号が駅を出ると、アニメ声の車内アナウンスが流れ、駅間ではちょっとした寸劇が繰り広げられる。列車は七尾湾沿いを進む。穏やかな七尾湾を向こうに、稲が風になびき、さざ波が田んぼを伝っていく。遠くに見えたボラ待ちやぐらは、観光用のものだそうである。七尾駅に着くと、今度はJRの「国宝長谷川等伯号」とかいうラッピング列車の到着記念式典が開かれており、ブラスバンドがディキシー風の「線路は続くよどこまでも」を吹き鳴らしている。こちらのラッピングは少しカッコいい。