久留米駅の構内には松田聖子の『赤いスイートピー』が流れ、女子高生の集団がサビを口ずさんでいた。JRの久留米駅を出て、池町川ぞいに西鉄の久留米駅の方へ向う。文化街のアーケードを抜けて、久留米のソウルフードだという木村屋のホットドックを買い求め、新世界をさすらう。再開発の進む六ツ門町の新世界は、奥の半分が高層マンションになってしまったものの、料飲店街の路地が辛うじて残されていた。静まりかえった路地では、廃屋となったカフェ新珠の割れた窓へ猫が飛び込んで行く。こちらは開店を待って飛び込んだ五十番で焼餃子を軽くつまむ。カウンターに並び「ビールば」「酒ば」と呟くように注文する御老体の渋い飲みっぷりにはすっかり痺れる。
餃子を一枚で自重して、老舗大衆食堂の松尾食堂にも伺ってみるが、残念ながら夜はやっていないようなので、ひとまず投宿する。屋台のラーメン屋が開くのを待ち、日の暮れる頃合を見て外出。松田聖子も通ったと言われる甘太郎にて団子を購ってから、とんこつの元祖だという南京千両という明治通りの屋台でラーメンを啜る。駅前の商店街の横道を行くと、とんこつラーメン発祥の地の路地裏は、なかなかとんこつ臭い。宿に戻ってTVをつけるとBSの『鉄道絶景の旅』が鹿児島本線篇だったので、峠恵子さんの「君だけの指定席」を聴きながらごろりとした。