Friday, November 01, 2013

浮雲



神田駅を出て東神田の方へ進み、左衛門橋を渡って浅草橋の洋食一新亭でオムライス。昼時は過ぎたようで客がいなかったが、しばらくすると写真仲間らしい方々がポツポツやってくる。ご主人の写真集他、写真系書籍の積まれている店内に紛れ、密かに身を隠している『富永一朗のたべある記』がなんだか気になる。

鳥越神社の方を回って浅草橋の駅に戻ると、駅前の銀杏岡八幡神社には、ネコとネコを可愛がる方々で大層賑わっている。おまけに人の方はといえば、わざわざ通ってきているような気配さえあった。そういえば、浅草橋駅前の針師さんの渋い家は今風になってしまっている。

浅草橋駅からは総武線で本八幡へ。市川市文学ミュージアムに赴き、ささやかな水木洋子展を見学する。それにしても水木洋子脚本で成瀬巳喜男監督の『濹東綺譚』が実現しなかったのは改めてつくづく残念に思われる。水木洋子に宛てた今井正の書簡の筆跡や言葉には、つい好感を抱いてしまった。ミュージアムには、今日の荷風として『断腸亭日乗』の一節がスクリーンに映し出されている。

帰りは京成の八幡駅から京成線に乗る。荷風の晩年に通ったことで有名な京成八幡駅前の大黒屋は、水木さんも利用していたらしい。夕陽を背にしたスカイツリーに向い、京成線は西に押上まで。押上からは吾妻橋を渡って浅草まで歩く。市川から浅草にやってきたのだから、せっかくなので荷風ゆかりのアンジェラスで小憩。ポワールのパイを購い、八重洲行きのバスにて帰る。