7時発の男鹿線はキハ48の4両編成。奥羽本線と分岐する追分あたり、薄く積もった雪が林間に覗く冬木立感がとても良い。船越で八郎潟の水門を過ぎ、しばし進むと男鹿駅。男鹿駅からは、そのまま折り返して戻ろうと思っていたのだが、雨もそう酷くは降っていないこともあり、少々駅の廻りをぶらついて行くことにした。とりあえずは、駅前を真直ぐ進み、ひっそりとした朝のスナック街を歩く。暇つぶしに入った街道のコンビニでは、たけやのアベックトーストと工藤パンのイギリストーストが並んいるのを見かけ、つい秋田のたけやではなく青森の工藤パンを手に取ってしまった。一頻り歩いて駅に戻り、列車の出発まで待合室のストーブにあたる。待合室のテレビを見れば、まだ『アサイチ』の時間である。帰りはキハ40で2両。この時間は主にご老人で秋田まで満員であった。
秋田駅前は殆ど再開発されつくした味わいの少ない町で、次には寄っていきたいと思っていた老舗喫茶の「やちよ」までも、この6月に閉店していた。かろうじて駅の南側に残された古い飲屋街を歩きながら、中通の春駒食堂に赴くと、11時を回ったばかりの食堂は、まだ薄暗い様子。暖簾は掛かっているので伺ってみると、ちょっとした珍客に、少し戸惑わせてしまったようではあるが、ひとまず入れてもらうことができ、待望の秋田名物肉鍋定食をいただく。熱々の肉鍋で体も芯から温まり、そろそろ駅に戻ろうかと店を出ると、雨は雪に変わりかけていた。秋田駅では、積年の課題である花善のとりめし弁当も見つけるが、今日は食う余地がないので残念ながら見送り。
奥羽本線の新庄行はクハ700で、何故かラッピングが「もやしもん」仕様。列車は次第に奥羽山中に至り、降雪も激しさを増して来る。奥羽本線を横手駅で下車すると、横手駅では駅舎までも「もやしもん」仕様である。いい加減、少しく調べてみると、横手市が「発酵文化のまち」だということで「醸」しているそうだ。横手駅からの北上線には、特に良い印象がなく、ただの繋ぎ区間のつもりだったが、望外に車窓の雪景が素晴らしい。中でも、シャーベット状の錦秋湖から疎らに覗く木立の風景は、幻想的ですらあった。