Friday, December 20, 2013

あけぼの



12月19日。いまや風前の灯火となってしまった夜行列車の「あけぼの」の乗納めに出掛けた。野暮用を早めに切り上げると、万難を排し、午後5時には上野に向う。空は生憎の雨模様だが、無事に上野駅に辿り着き、駅を出てすぐの黒船亭で洋食弁当の夕食。向かいの旦那は、悠然と「底ぬけ」なる清酒を召し上がっている。それにしても、真面目なスープというのは全く良いものだ。カニコロッケ、タンシチュー、オムレツの洋食弁当を堪能した後は、愈々迫った夜行列車の乗車に備え、同ビル地下のカフェ・ルノワールにて小半時ばかり電子機器の充電休憩をとる。

入線の時間に合わせて駅に戻り、夜食の買い出しも終えていざ13番線へ。つい入線に見蕩れて無防備なところをつかれ、ふいに取材記者の方から「乗られるんですか」と声を掛けられたので、カメラがこちらを向く前に「写真だけ」としょうもない嘘をついて逃げる。残念ながらこの日の個室は取れなかったため、開放のB寝台ということになってしまったものの、その古さはかえって味わい深い。列車は定時に上野を出発。乗りなれた皆様は、すぐさまカーテンの内側に入り、すっかりしんとして夜行モードになる。こちらも見倣って、カーテンを引いて、少し旅装を解いた。

幾度乗っても、寝台に寝そべって眺める夜の車窓はやばい。10時を回ったあたりで列車が熊谷を過ぎると、だんだんと窓際から冷気が押し寄せてきた感じがしたので布団をかぶり、少しうつらうつらしてきたところで、ガタンと停車して零時前に水上駅。外を覗くと積雪があり、小雪がちらついているのも見える。この揺れっぷりだと、個人的には全く熟睡は望めないのだが、やはり夜行寝台という空間の旅情といったらない。長岡での長い時間調整が終えて発車すると、浅い眠りながらもだらだらと休むことは出来た。車内はかなり寒いが、小さい布団でもかぶると暑いぐらいであった。

12月20日。あけぼのが秋田駅へ到着する時間に先駆けてセットしていた目覚ましが鳴る前に起きだすと、6時過ぎに羽後本荘に到着。こちらもまた雨のようで、外はまだ真っ暗だが、線路わきには白い雪が見える。ようやく空が明るみはじめたのは、もう秋田も目前になってからで、秋田駅の自販機によれば当地の気温は4度。向かいのホームには、東京行きのスーパーこまちが止まっているのが見え、あれだと何時間で東京に戻ってしまうのだろうかと、つい考えてしまう。E3系のこまちは5日ほど前にラストランをしたそうだ。