北上線に1時間ほど揺られて終点の北上駅へ辿り着き、北上駅からは東北本線を10分ばかり北上して花巻駅で降りる。午後の三時半を過ぎた冬曇りの花巻の空は、ずいぶん暗くて重たい。駅のコンビニで南部煎餅のバリエーション各種を贖い、四時のバスで大沢温泉に向かう。ペパーミントグリーンのジャージを着た湯口の中学生がパラパラと降りていなくなると、バスは大沢温泉に到着。以前、二度ほど伺ったことのある鉛温泉は、このさらに奥で、そこまで行く頃にはだいたい乗客がいなくなるのだが、大沢あたりまではまだ少し人気もある。
鉛温泉と同様、大沢温泉でもお世話になるのは自炊部。数年前の鉛温泉湯治部で、冬の湯治部の寒さは骨身に沁みたので、今回は「冬の湯治部プラン」という炬燵とファンヒーターこみのプランにしておいた。案内された中舘の角部屋は、眼下の豊沢川を挟んで水車小屋と茅葺き屋根の菊水館を見下ろすなかなかの眺め。館内は鉛温泉ほどの遺跡感は無いが、生き生きした売店と食堂が嬉しい。食堂の開店を待って、まずはひっつみの定食で腹拵えをする。食休みしてからは露天にゆっくりとつかり、後は延々と炬燵に入ってうつらうつらした。