Monday, October 26, 2015
北見
10月23日。羽田を出た飛行機が女満別空港に着陸し、網走駅行のバスに乗込むと、満席だった飛行機の乗客は一向にバスに現れない。発車を待つガランとしたバスの両替機で千円札を崩すと、出てきた硬貨はピリッと冷えている。バスは網走湖岸を通る。白樺の黄色い葉がまだ少し残っている。網走の市街に入り、ほどなく網走刑務所に差し掛かる。英語のアナウンスに直截「Next stop is prison.」と言われると、何かの暗喩のようでハっとする。
網走駅に着いて、次の石北本線の発車を待って待合室に入る。モニターには「あさイチ」で、ゲストは朝ドラに出演中の宮崎あおい。改札が始まって寒い構内に入る。清々しく寒いホームから乗込むキハ40の有無を言わさぬ暖かさがたまらない。遠軽行の列車は二両編成で、後部車両の乗客は4人。中吊りには来年の北海道新幹線開業の広告が出ている。暗い樹林の中に不意に現れる、へにゃっと折れ曲がった白樺の白さは殺伐とした味わいがある。
網走から1時間ほど乗車して北見。駅の土産店でざっと名産のものを見て、ハッカ楊枝などを購入する。駅を出て閑散とした駅前の片側式のアーケード街を少し歩く。「きなり」という食堂に入り、昼食に「北国のコロッケ定食」。店内はもう灯油ストーブが炊かれている。後から入ってきた常連さんが、ずらっと並んだ『静かなるドン』の50巻をすっと取って席に着く。ゆっくり出てきた定食は丁寧な味で、味噌汁や卵焼きも真面目に美味い。まだ少し時期は早いが、有線から「Do they know it's Christmas」がかかっているのも冬っぽくて良い。
昼食を終えて再び町を歩いていると、人だかりのしている菓子店があり、つられてふらふらと寄ってみる。店内では、わずかに残っている鮎のような菓子を、腰の曲がった老婆が取り憑かれたように買い漁っていて、1コも残さないんだな…と遠巻きに眺めていたところ、すぐに補充するというので少し待って購入。「ほっちゃれ」という鮎の鮭版のようなもので、他にも3万円以上も買っている人もいる。
アーケードの商店街を抜け、キャバレー太陽の看板も素敵なスカイビルを過ぎると、あたりは歓楽街となる。外まで響くカラオケの歌声につられ、ユニオンビル地下のスナック街を素見す。薄暗い地下街の赤く妖しげなリノリウムの廊下を、「ナイト・パブ・タイムスリップ」の波打つロゴに導かれる白昼のタイムスリップ感が目眩を誘う。他にもナイトインヒルトン、ナイトサロンエマニエルなど素敵なネオン管が町中に見られるが、夜には現役で光っている姿が見られるのだろうか。駅の方へ戻り、西銀デパートの地下名店街にて、シャンデリアが素敵な喫茶雅で小憩。隣の席のおばあさんが孫夫婦やひ孫と一緒に沖縄に行ってきた土産話をしている。