Saturday, December 26, 2015
Tuesday, December 22, 2015
Thursday, December 17, 2015
砂渡し
12月13日。西日本ではまだまだ日の出は遅く、松江で7時7分である。早朝の松江の歓楽街では、烏を制した鳶がバッサバッサとゴミを漁っている。朝7時半の各停米子行きは、かなりゆったりしている。やや小雨混じりだが、空は少し焼けていて、中海の向こうにたなびく雲が朝靄と相俟って、神話の風景のようでもある。米子駅で境線に乗換えると、車内アナウンスは鬼太郎と猫娘に変った。
境港駅前に鎮座する水木先生の銅像のお言葉は「なまけ者になりなさい」。亡くなって間もない水木先生だが、追悼の儀は一通り終わった様子。朝まだ早い水木しげるロードを歩きながら、頭の中を「砂渡し爺」が流れる。商店街を少し外れ、境水道まで歩いて、喫茶ポパイでモーニング。境港は観光の町で、あまり居場所を見つけられない感じであったが、風呂付きの喫茶ポパイは和む。店の前の水道を隠岐から来たジェット船が過ぎる。港よりのささやかなスナック街には、カフェーの鑑札なども残っている。境港に来る前に地図を見ていて、この辺は植田カメラが多いなと思っていたが、やはり植田正治がはじめた店のようである。現在は県内に4店舗あるらしく、出身地である境港にも立派な店舗があった。
Wednesday, December 16, 2015
ぼうげつ
宍道駅からは山陰線に乗換えて松江。松江は完全に雨模様である。高架を走る列車からも松江城は見えたが、もう少し近くまで行ってライトアップされた国宝の天守閣を眺める。いい感じに腹が減り切ったところで、カツライスを求めて「ぼうげつ」へ赴くと、本日二軒目の臨時休業。しんとして真っ暗なぼうげつの佇まいも良いものの、残念なことであった。変わりに堀川端の橘屋本店でカレー蕎麦を啜る。田舎風の黒くてもっちりした蕎麦のカレー蕎麦は新鮮な味わいである。雨の中、無料案内所も閉まっているこじんまりした伊勢宮の歓楽街を素見して松江駅前の宿に投宿する。
ホテルのフロントでもらった新聞の山陰中央新報によれば、松江駅構内の商業施設は昨日リニューアルオープンしたばかりらしく、今日の昼間には浜田真理子さんのミニコンサートも開かれていたとのこと。ただし、夜の8時過ぎには早々に店じまいしており、観光客らしき人々は軒並み「閉まるの早い」とぼやいている。やむなく300メートルほど先のイオンまで遠征し、木次コーヒー牛乳などを買い出して宿に戻った。
リミット
三次を出ると、少し小雨まじりになる。芸備線も本格的に閑散区間に入って、車内を見渡してみれば、ほぼ物好きな乗客である。車中読書が西村京太郎というなかなかのベタな客の姿も見える。庄原を過ぎて極端な徐行運転となるが、この辺りの路線も一度路盤が崩れたりすると立ち直れなくなるかもしれないので、慎重な運用もやむを得まい。西城あたりから地元の人らしき撮影隊がドカドカと乗り込んできた。何のイベントか、内から外からカメラが構えられて落ち着かない列車となった。
備後落合から先は極端に本数の少ないエリア。ここから更に新見まで進む芸備線も魅力だが、今回は久しぶりの木次線で山陰に向かう。1本乗り過ごすと恐ろしいことになる備後落合の駅構内には、近隣の中学生が描いた「タイムリミットあとわずか」という素敵なポスターが飾られている。
木次線は何年ぶりだろう。宍道駅まで約3時間。極端に感じるほどの徐行で列車は進む。落合を出たあたりは杉と松ばかりなので山は緑だ。出雲坂根駅のスイッチバックを下りて、あたりの気温は6℃。道中、木次までで出入りがあったのは亀嵩駅のみである。閑散とした区間といっても、もう少しお婆さんの利用ぐらいはあるものだが、全く住民の足という感じはない。木次からようやく息を吹き返した列車は、午後五時半を過ぎて真っ暗な宍道湖に到着した。
ラッキー映劇
芸備線を終点の三次駅で下車し、町の中心である三江線の尾関山駅の方へ歩いていると、映画館跡らしき姿をとどめている建物がある。かすれた看板からはラッキー映劇と読める。切符売場の上に残ってしまった「本日上映中」という赤いプレートの虚しさが味わい深い。馬洗川を渡ってすぐの横道の松原稲荷通りという素敵なスナック街を往復し、商店街に戻ってまたそぞろ歩く。辻村寿三郎美術館から出てきた学芸員らしきお姉さんに挨拶され、会釈を返す。どう見ても観光丸出しの風体をして町をうろつきながら、町の目玉の施設へは寄って行かないことに申し訳ない気分になる。
馬洗川の橋を戻り、昼の目当てにしていたお食事処今友は無念の臨時休業。ただし、やっていないと思っていた喫茶ナカモトでゆっくりすることができた。ナカモトは佇まいもトーストセットも何もかもが素晴らしい。おしぼりが自家製の今治タオルというのも何だかいい。古い街道らしき本通り商店街を歩いて三次駅に戻る。三次からはさらに芸備線を備後落合まで進む。三次駅を出てすぐ、古く錆びついた転車台があった。
喫茶 潮
12月12日。せっかく土曜の朝を広島で迎えたので、オープニングだけでもと、広島ホームテレビの『週末喫茶アサブランカ』を目にして宿を後にする。流川〜中新地と、朝の歓楽街を眺めつつ、京橋町の喫茶潮まで歩き、味噌汁付きのBモーニングをいただく。潮はウインズに近い店で、店内には競馬チャンネルが流れ、カウンターにはマークシートが常備されている。2人続けてゆで卵の塩を忘れたことに恥じ入るママの様子が素敵である。潮の正面にあった京橋会館も今や高層マンションになり、純喫茶パールのあたりには巨大なホテルが完成しようとしている。
広島から出る芸備線の三次行普通列車はキハ40の二両編成。なかなか混むのだなと思っていたが、3駅目の安芸矢口駅でかなり空いた。キハはやはり暑いぐらいだ。それにしてもこの辺りはかなりの駅で列車交換をする。芸備線は開業百周年であるらしく、蒸気機関車を配した垂れ幕が各駅にかかっている。沿線には瓦屋根に立派なシャチのいる家か多い。少し赤瓦が増えてきたと思ったら、いつのまにか分水嶺を越えていて、江ノ川が北に向かって流れていた。
Tuesday, December 15, 2015
第一劇場
午後の3時を過ぎたので、ひとまず平和大通りの宿に投宿。広島での夕べは、横川銀映の成人映画と広島第一劇場のストリップのどちらでのんびりするか悩んだが、上映作がピンと来ないこともあって、近い方の第一劇場にしておく。常連さんらしき人々の屯するロビーを抜けて入場すると、ステージまわりのかぶりつきの席は、既に荷物が置かれて場所が取られている。開演を待つ薄暗いホールで、劇場の隅に座って聴くキャンディーズの『危ない土曜日』の素晴らしさに思わす胸が震えた。
昔、渋谷の道頓堀劇場で見た経験で、ストリップというのはただ後ろでぼうっと見てればいいものだと思っていたが、人もまばらな公演の場合には踊子嬢とのコミュニケーションが必要となり、ただ座っていればいいものではなく、参加すべきものとなる。12〜3人の観客の多くは踊子さんとも顔見知りのようで、貢ぎものがあったり、ポラの撮影を買って出たりと、和やかに公演は進む。4人のうちの最初のステージが終わって踊子さんから飴ちゃんをもらう。彼女も広島に着くと必ず「むすびのむさし」で若鶏むすび買って楽屋入りするらしい。女盗賊さんのステージでは舞台から投げられるハート型のクッションをキャッチしては投げ返すというやり取りも発生。でも最終的に開演前の危ない土曜日が掛かっている時の雰囲気がヤバかったとか言ってるのは恐らくダメな客だろう。
2時間あまりの公演を見届けた後、すぐ近くのお食事処新京本店に入り、元祖カレー汁にて晩餐となす。流川の歓楽街を少し素見し、イルミネーションで飾られた平和大通りを少し散歩して宿に戻る。昼間に「手作りのパン河内ベーカリー」で買ったシナモントースト、あんドーナツなどを夜食につまんで寝床についた。
銀映劇場
12月11日。早朝の羽田空港は、低気圧による強風により、途中で引返すかもしれないという警告で喧しい。乗り込んだ7時発の広島行は空いていて、隣は空席である。着陸態勢に入った飛行機が強風にあおられた時には少し気を揉んだが、着陸をやり直して15分ほどの遅れで広島に到着した。広島では広島で羽田行が引返すかもしれないことをしきりに警告している。
広島を訪ねるなら、先日亡くなった原節子の追悼に尾道の浄土寺まで足を伸ばそうかとも考えていたのだが、すっきりしない天気なので取りやめ。空港から最寄のローカル駅に行くバスは、遅れた飛行機を待っていなかったため、広島駅まで行くリムジンバスに乗り込む。駅で「むすびのむさし」の俵むすびとたまご汁で軽く腹拵えをして、まずは未乗の盲腸線である可部線を往復することにする。
可部線は基本的に郊外住宅線のようだが、山が近いのでなかなか錦秋感が楽しめる。列車は広島市街を北に進む。沿線には中腹をスライスした異様な山容の造成地もあれば、危険な蛇崩感のある素敵な山も見える。七軒茶屋駅のあたりまで奥まってくると、豪壮な瓦屋根の豪邸がちらほら現れた。終点の可部駅までぼんやり乗り通し、そのまま向かいのホームに止まっていた列車で折り返す。途中で交換した広島行はなかなかの混雑だったが、折り返して乗った上りは乗客も疎らであった。
広島駅に引き返す可部線を途中下車し、横川の駅周辺を少し散策。駅前のアーケード街の入口に、サンフレッチェのJ1優勝を祝う垂れ幕が掛かっている。昼めし時の横川は、そこら中からソースの匂いが漂う。ミニシアターの横川シネマ、成人映画の横川銀映と二つの映画館のまわりをぶらぶらと見て歩く。銀映で次回上映予定の『色情旅行 香港慕情』に魅かれつつ、現在上映しているプログラムはあまりそそらないラインナップなので、ひとまず保留した。
横川からは市電で八丁堀まで行き、午餐に「肉のますゐ」のハムライスとサービストンカツをいただく。食後にアーケードの金座街や本通をぶらついていると、古書店のアカデミィ書店の店頭に恭しく陳列された美能幸三の著書『極道ひとり旅』が目に入る。これはと思って、店内を物色してみたが、あまり関連するような書籍は見あたらない。『極道ひとり旅』は4万円なのでもとより手が出ず、保育社の『国鉄の旅/中国・四国編」などを買うに留める。新刊書店の廣文館もひとまわりして、えびす通りの喫茶店シャモニーモンブランで小憩。シャモニーモンブランのフロアを仕切るのは、婿入りしたというイギリスの方であった。
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