Tuesday, December 15, 2015

銀映劇場

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12月11日。早朝の羽田空港は、低気圧による強風により、途中で引返すかもしれないという警告で喧しい。乗り込んだ7時発の広島行は空いていて、隣は空席である。着陸態勢に入った飛行機が強風にあおられた時には少し気を揉んだが、着陸をやり直して15分ほどの遅れで広島に到着した。広島では広島で羽田行が引返すかもしれないことをしきりに警告している。

広島を訪ねるなら、先日亡くなった原節子の追悼に尾道の浄土寺まで足を伸ばそうかとも考えていたのだが、すっきりしない天気なので取りやめ。空港から最寄のローカル駅に行くバスは、遅れた飛行機を待っていなかったため、広島駅まで行くリムジンバスに乗り込む。駅で「むすびのむさし」の俵むすびとたまご汁で軽く腹拵えをして、まずは未乗の盲腸線である可部線を往復することにする。

可部線は基本的に郊外住宅線のようだが、山が近いのでなかなか錦秋感が楽しめる。列車は広島市街を北に進む。沿線には中腹をスライスした異様な山容の造成地もあれば、危険な蛇崩感のある素敵な山も見える。七軒茶屋駅のあたりまで奥まってくると、豪壮な瓦屋根の豪邸がちらほら現れた。終点の可部駅までぼんやり乗り通し、そのまま向かいのホームに止まっていた列車で折り返す。途中で交換した広島行はなかなかの混雑だったが、折り返して乗った上りは乗客も疎らであった。

広島駅に引き返す可部線を途中下車し、横川の駅周辺を少し散策。駅前のアーケード街の入口に、サンフレッチェのJ1優勝を祝う垂れ幕が掛かっている。昼めし時の横川は、そこら中からソースの匂いが漂う。ミニシアターの横川シネマ、成人映画の横川銀映と二つの映画館のまわりをぶらぶらと見て歩く。銀映で次回上映予定の『色情旅行 香港慕情』に魅かれつつ、現在上映しているプログラムはあまりそそらないラインナップなので、ひとまず保留した。

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横川からは市電で八丁堀まで行き、午餐に「肉のますゐ」のハムライスとサービストンカツをいただく。食後にアーケードの金座街や本通をぶらついていると、古書店のアカデミィ書店の店頭に恭しく陳列された美能幸三の著書『極道ひとり旅』が目に入る。これはと思って、店内を物色してみたが、あまり関連するような書籍は見あたらない。『極道ひとり旅』は4万円なのでもとより手が出ず、保育社の『国鉄の旅/中国・四国編」などを買うに留める。新刊書店の廣文館もひとまわりして、えびす通りの喫茶店シャモニーモンブランで小憩。シャモニーモンブランのフロアを仕切るのは、婿入りしたというイギリスの方であった。