芸備線を終点の三次駅で下車し、町の中心である三江線の尾関山駅の方へ歩いていると、映画館跡らしき姿をとどめている建物がある。かすれた看板からはラッキー映劇と読める。切符売場の上に残ってしまった「本日上映中」という赤いプレートの虚しさが味わい深い。馬洗川を渡ってすぐの横道の松原稲荷通りという素敵なスナック街を往復し、商店街に戻ってまたそぞろ歩く。辻村寿三郎美術館から出てきた学芸員らしきお姉さんに挨拶され、会釈を返す。どう見ても観光丸出しの風体をして町をうろつきながら、町の目玉の施設へは寄って行かないことに申し訳ない気分になる。
馬洗川の橋を戻り、昼の目当てにしていたお食事処今友は無念の臨時休業。ただし、やっていないと思っていた喫茶ナカモトでゆっくりすることができた。ナカモトは佇まいもトーストセットも何もかもが素晴らしい。おしぼりが自家製の今治タオルというのも何だかいい。古い街道らしき本通り商店街を歩いて三次駅に戻る。三次からはさらに芸備線を備後落合まで進む。三次駅を出てすぐ、古く錆びついた転車台があった。