12月13日。西日本ではまだまだ日の出は遅く、松江で7時7分である。早朝の松江の歓楽街では、烏を制した鳶がバッサバッサとゴミを漁っている。朝7時半の各停米子行きは、かなりゆったりしている。やや小雨混じりだが、空は少し焼けていて、中海の向こうにたなびく雲が朝靄と相俟って、神話の風景のようでもある。米子駅で境線に乗換えると、車内アナウンスは鬼太郎と猫娘に変った。
境港駅前に鎮座する水木先生の銅像のお言葉は「なまけ者になりなさい」。亡くなって間もない水木先生だが、追悼の儀は一通り終わった様子。朝まだ早い水木しげるロードを歩きながら、頭の中を「砂渡し爺」が流れる。商店街を少し外れ、境水道まで歩いて、喫茶ポパイでモーニング。境港は観光の町で、あまり居場所を見つけられない感じであったが、風呂付きの喫茶ポパイは和む。店の前の水道を隠岐から来たジェット船が過ぎる。港よりのささやかなスナック街には、カフェーの鑑札なども残っている。境港に来る前に地図を見ていて、この辺は植田カメラが多いなと思っていたが、やはり植田正治がはじめた店のようである。現在は県内に4店舗あるらしく、出身地である境港にも立派な店舗があった。