朝の港を歩くと、潮風がねっとり吹いている。小値賀からの帰路は、佐世保行の高速船。船内で西日本新聞を開くと、ヘクトール・バベンコの訃報が目に入った。平戸島を横目に船は進み、客室のテレビでは佐世保出身の前川清が平戸を旅している。佐世保からは一旦唐津の方へ向かう。美しい棚田の谷を抜け、玄海原発の海を過ぎる。途中、何の気無しに名護屋城跡に立ち寄ってみると、廃城の夢の跡っぷり感が思わぬ迫力で驚いた。唐津まで進み、虹の松原で唐津バーガーをつまむ。あたりはもうツクツクボウシが鳴いている。
唐津から佐世保に戻り、防空壕を転用した市場のとんねる横丁や、下京町あたりの歓楽街を歩く。夕食は趣き深い喫茶店の山本コーヒーにてステーキピラフ。デザートには「夏の味覚・ミルクセーキ」のコーヒー味をいただいた。投宿後、夜の歓楽街を再び散策する。佐世保も米軍人の多い町だ。街中では、屋台の唐揚屋で若い米兵がカラアゲをつまんでいる。アーケード街を佐世保中央駅の方まで歩くと、ウミノの支店などもあったが、もうとっくに閉まっている。夜も更けて暗くなっていく町中で、どうにも渋いお食事おはぎの溝口商店の明かりに誘われるが、腰が引けてやり過ごしてしまう。夕方の雨で恐ろしく蒸し暑い夜だった。