Wednesday, September 19, 2012

新潟



9月9日。枕元に置いていたメガネをぐにゃりと踏んで、鮮烈に目を覚ます。簡単に身支度をして帳場で勘定を済ませ、ご主人から着物の古裂を使ったという楊枝入れを有難くいただく。天気の良いときには、宿の玄関から月山と鳥海山も見えるそうだが、この日は残念ながら靄っている。杉村春子先生が公演で鶴岡ホテルを訪れる度に「絶対に壊さないでください」とおっしゃったという気持ちをしみじみと噛み締め、近いうちにも月山と鳥海山を見に来ようと思う。ただし、近くに見えている母狩山の山影も悪くはない。

朝の羽越線はとてもゆったりとしており、交流のこの区間がキハ40系だというのもまた良い。日本海も今日は穏やかである。鼠ヶ関を越え、新潟に入ると粟島が見えた。村上駅で羽越線を乗継いで、直流区間に入ると電車のクモハ115になる。吉田行の電車を新潟駅で降り、バスで新潟島に渡って古町を少し歩く。古町通を一本裏に入るとジャズ喫茶と並んで、特殊浴場などもあり、なかなか混沌とした風情である。柾谷小路の北側の豪壮な料亭の門の中には人力車の姿なども見えた。

都合良く時間が余って万代橋の水揚場に大友良英氏のインスタレーションを見に行けるなんてはずもなく、万代橋を渡るバスの窓から水揚場のある朱鷺メッセの方を眺める。新潟からは快速くびきのに乗り、長岡から新幹線で帰京する。新潟駅で買った大阪屋のコーヒー白玉が思いのほか美味い。新幹線のシートでうとうとしながら、全国の来夢来人コレクションが壮大な仕事になるのはともかく、「夜来香」コレクションもなかなか立派なものになるだろうなどとぼうっと考えていた。今回見かけた「夜来香」は、花巻と北上で、ぎょうざの店とスナックの「夜来香」なのであった。