Tuesday, April 08, 2014

志布志

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都城を後にした『鉄砲玉の美学』の渡瀬恒彦は、霧島への死出の山路をバスで向かうのだったが、こちらは海に向かって暢気にバスに乗込んだ。都城を発つ志布志行の乗客は3人。バスが都城の市街地を出ると、国道の脇に志布志線の廃線跡を利用したと思われるサイクリングロードが現れ、まばらな桜並木になって延々と続いているのが見える。旧今町駅前のバス停を過ぎ、県境を越えた末吉駅では、駅舎やホームも保存されているようであった。

次第にバス停に〜園(ぞの)という名が増え、いよいよ鹿児島県だなと思いはじめたところで、沿道の墓もこのあたり特有の屋根つきのモノになってきた。バスは一帯の茶畑を抜ける。民家の庭先にはツツジや芝桜が咲いているので、季節としては東京から一ヶ月先を行く感じだろう。山間に「子犬います」という店が数件見られたのは、何れかの犬種の産地などであったりする故なのだろうか。

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都城から1時間半ほどでバスは志布志に到着。茫漠とした駅前にがらんと延びる道路沿いの鉄道記念公園は、志布志が鉄道の要衝であったことを示してはいるが、現役の駅の方といえば、かつて3線が乗入れていたとは思えない、何ともこじんまりとした終着駅っぷりである。商店街のマルチョンラーメンで遅めの昼食をとり、境内で遊ぶ小学生に挨拶をされながら古刹の大慈寺を参拝する。志布志市志布志町志布志2丁目の志布志市役所志布志支所前では役人の方からも声をかけていただいた。以前、日奈久温泉にて山頭火が泊まった木賃宿というのを見たのだが、志布志にも山頭火は訪れていたようで、なかなか立派な句碑が立っている。それにしても「秋の空高く巡査に叱られた」とは甚だ素晴らしい。入江の方に歩いて出会した廃ビルの猫だまりで時間をとられ、いつの間にかすっかり陽が傾いてしまった。