市民病院前からモノレールに乗って隣の儀保で降り、首里城の方へと進む。街中には先週末に行われた知事選のポスターがまだ残っている。安谷川坂を南に歩いていると、細い石段の脇道が見える。谷底には閑寂とした史跡の井戸があり、しばし佇んで蚊に刺されまくる。道に戻って琉球王家御用達であったという醤油蔵を過ぎ、坂を登りきったあたりで安谷川の御獄を拝む。
安谷川坂を逸れ、続いて成人映画館の首里劇場を拝す。唐破風調の屋根に、幾重にも塗装の剥落した劇場のファサードが甚だ美しい。劇場前の医院の門前には、熟れきったラフレシアのような色をした花が、今にも腐り落ちそうになって垂れ下がっている。元を辿っていくとバナナの若い実がなっているのでつい目を疑った。幼児が遊んでいる児童所のすぐ隣で、喘ぎ声が響き渡る首里の長閑さには心和む。63年続いたフィルムでの上映を終了する首里劇場は、来月からデジタルでの上映に移行してしまう…という情報を帰京後に知り、激しく機を逸した感を噛み締める。