7月5日。旭川は日中32℃まで気温が上がるということだったが、早朝の街中は18℃でなかなか清々しい。旭川からは6時発の宗谷本線に乗って稚内へ向う。ざっと見たところ乗客は旅の人ばかりのようで、早速駅弁などを広げている。窓から入り込むディーゼルの匂いをかぎながら、朝食にはビタミンカステーラを齧る。夏期休業中の短いラッセル車が北旭川の操車場にずらりと並ぶ様が何だかやけにかわいらしい。蘭留駅を過ぎて山間に至る。徐々に乗込んできた高校生がまとめて降りていった剣淵駅には、町立の農業高校があるらしい。白樺林を抜け、久しぶりに町が開けて士別。士別駅では高校生の大入替。男女ともインテルやミランやユナイテッドやら思い思いのサッカーシャツに思い思いの滅茶苦茶なネームを入れている。名寄で再び客を取替えて、天塩川沿いを進む。名寄からの高校生は美深で下車。列車がさらに北へ進むと、低い山の頂きにもちらっと雪が見えるようになった。
駅蕎麦で有名な音威子府駅には9時前に到着。乗ってきた列車はここで30分ほど停車するが、名物の駅蕎麦が開店する前に出発してしまうので、次の列車まで2時間あまり町をふらついていくことにする。天塩川沿いを少し歩いて村役場に出ると、音威富士に向って真直ぐ延びる道の先に鳥居があり、中腹に祠のようなものが見える。何も無い町の誰もいない町外れの神社でぼけっとするのも良いかとはるばる行って登ってみると、何故か祠の裏にはパイプ椅子がずらっと並んでいる。祠に向う急な階段を迂回する道路には警察関係の車輌などが続々と登ってくるのが見え、どうやら境内でゆっくりするような事態ではないようなので、早々に引き上げる。音威子府も10時前でかなり暑い。
誰もいない駅に戻り、汗を流しながら念願の黒いかけそば。まだ次の列車まで時間はあるので、辛うじて見つけた商店にて地のものなどを物色しようと思っていたのだが、あまりの暑さに再び外に出る気も起きず、駅舎内にある旧天北線の資料室をぐだぐだと見て回る。本当は隣駅にある砂澤ビッキのギャラリーにも寄って行きたかったのだが、列車で音威子府との両立は難しく断念。窓口では釧路に行くという中年の男性が、急行の切符を注文している。宗谷本線は特急の創設が遅かったので、この辺りでは早い列車は急行という認識がまだ根強いのだろう。