Thursday, July 18, 2013

挽香



音威子府からは特急のスーパー宗谷で稚内まで。この区間は線形が良くないので、特急といえどもあまり時間は短縮されず、2時間ほどを要する。山間はほとんど電波も無い。さきほど乗った各停には若者もいたが、特急の指定席は概ねシニア専用のようだ。何故か特急は二両増結している。幌延を過ぎ、サロベツ原野ごしに利尻富士が見える。列車は何とはなしに10分ほど遅れ、13時に稚内に到着した。

稚内駅では、まず翌日乗る予定の沿岸バスのフリー切符を確保する。沿岸バスのフリー切符は、ルートの留萌にちなんだ「絶景領域・萌えっ子フリーきっぷ」と言い、萌えキャラが派手にデザインされているもの。そのキャラにあわせて切符が何種類かあるようで、購入する際に、どれでもいいですよねと声をかけられる。選ばせてもらえるなら選ばないでも無いのだが、どうでも良い種類の人間に分類していただいて、少しほっとする。稚内は駅の売店もなかなか面白いが、まだ旅も半ばなので自重した。

駅前に出ると、行こうと思っていたノシャップ行きのバスがいたので、ひとまず乗り込んでみる。なんだか稚内は祭のようで、パリっとした幟が並んでいる。岬に着き、まずは樺太食堂にて、かにいくら丼を堪能。ただしここでは専用の大用紙にメッセージを書かせられるので注意が必要である。僅かにある岬の浜にはごついウニの殻や、毛蟹の抜け殻が転がっている。薄雲を透かして沖にはかすかに巨大な利尻富士が見える。ノシャップ岬をぐるりとすると、性悪な海鳥に爆撃目標にされるが、露骨に爆撃意思を見せてくれたので避けることができた。岬から微かに見える利尻富士や宗谷岬もいいが、自衛隊分屯地の丘が何気に美しい。



駅に戻るバスを少し手前で降り、樺太連絡船の駅だった稚内桟橋駅跡の稚内港北防波堤ドームを眺める。誰もいない防波堤ドームの前では、止めた車からロマンチックな音楽を流して語りあうやんちゃなカップルを邪魔して申し訳なく見学していたが、ふいに続々と観光バスが来てズカズカ写真を撮りまくって行った。

稚内の町中に戻ってみると、町を挙げての大祭の只中で、確かに特急を2両増結する規模である。アーケードの商店街には車道側に屋台2列が延々と並び、広場では『北酒場』が高らかに流れている。商店街には味わい深そうなファサードの商店も散見するが、祭りの賑わいにすっかり埋没している。ふとアーケードの屋根を見上げると、逐一ロシア語の説明が入っている。最北の書店といわれるクラーク書店にて、何度か立読みしては敬遠していた『羆嵐』を、今だと思って購入し、目当ての喫茶店の挽香へ赴く。素敵な枯れ具合の挽香の店内にも、店の前で繰り広げられる祭太鼓が腹の底まで響いてくる。地元の食品を数多取り揃えた相沢食料百貨店を徘徊し、何気なく丸ヱ寺江食品のいもゴマドーナツを手に持って検討していると、後から来た人が残り全部ごっそり浚えていくので、すかさず追従することにする。その他にも自家製おはぎや地元専門店の菓子や餅など心引かれるものが多々あり、相沢食料百貨店はなかなかやばい店なのであった。