Saturday, July 20, 2013

オロロン



7月6日。稚内は祭り二日目の朝、静まり返った屋台の間を、ゴミにたかったカラスが大騒ぎしている。喫茶店の挽香も朝の6時から大変な賑わいだ。稚内駅を6時台の列車で立ち、幌延駅まで1時間ほど宗谷本線を進む。この日は利尻富士の姿は全く見えない。宿でもらった新聞を開くと、ウラジオ沖のピョートル大帝湾で中露海軍が大規模演習するという記事が載っている。稚内から見れば、ウラジオストックのニュースは南の出来事ということになる。兜沼駅で交換した列車を見ると、稚内行きの乗客はたった一人だった。

幌延からは留萌行の沿岸バスで羽幌線跡を辿り、日本海沿いのオロロンラインを南下する。路線バスとはいえ、長距離にわたる豊富留萌線のバスの中では、ローカルAMのSTVラジオが流れている。猟銃を背負ったハンターが歩いてる国道を三十分ほど進み、手塩高校に着くと乗客が全員おりていく。何となしに手塩高校を検索してみると卒業者にはポール牧とラッシャー木村の名前がある。手塩から乗った二人が遠別で降りて、乗客は完全にいなくなるが、再びぽつぽつと人を乗せて、バスはさらに南へ進む。初山別北原野というバス停の名に衝撃を受けつつ、バスは初山別の町に入る。初山別の町の人は総出で町中を掃除していた。



幌延から2時間ほど進むと羽幌の町。ここで途中下車して少憩する。沿岸バスのターミナルには、羽幌炭鉱をハイヤーで廻るという魅惑的なプランが提案されていて、激しく心が揺れる。タクシーの運転士さんが撮りためたという炭鉱写真のDVDも気になるが、恐らく紙の写真集なら買っていただろう。羽幌の町を少しぶらついて1時間後のバスに乗車。乗車してほどなく三毛別羆事件の苫前町を過ぎる。現場は山側にしばらく入ったところだが、町役場のある国道沿いでは仁王立ちのクマが出迎えてくれる。スピード落とせの看板にもかわいいクマさんが見える。バスは留萌郡に入る。薄もやに消え行く日本海の水平線が杉本博司氏の海景のようだ。