気持ちよく列車に揺られながら、留萌本線を半睡状態で深川へ進む。恵比島駅の古びた駅舎は、ドラマセットの明日萌驛として作られたもののようだが、駅前旅館もあわせてなかなかの佇まいである。まっぷ駅や北一已駅など留萌本線は全線通じてなかなか素晴らしい印象なのだが、なにしろ半ば睡っていたので、些か記憶はあやしい。終点の深川駅にてウロコダンゴをゲットし、上りの函館本線に乗換えて、滝川駅まで少し南下する。
滝川からは根室本線の快速狩勝で帯広へ向う。滝川ー釧路間を結ぶ最長の普通列車である2429Dには及ばないものの、池田まで行く快速の狩勝でも帯広まで4時間11分の行程だ。かつては貨物取扱いが全国一だったこともあるという炭鉱の町の赤平駅を過ぎたところで、「さようならありがとう住友赤平小学校」の横断幕が見える。芦別の遠くにそびえる大観音は北海道大観音というものだそうで、かなりの秘宝ぶりを誇る施設らしい。開けた窓から紛れ込む栗の花の匂いが臭い。野花南駅を過ぎて長いトンネルを抜けるとほどなく富良野駅に到着。ここで客の大入替となる。日が長いとはいえ、富良野を出てしばらくすると外も闇に包まれて何も見えない。幾寅駅で概ね高校生は下車。八時を過ぎる辺りからのローカル線の寂寥感は本当に堪らないものがある。ただし、一組だけの相客が中国人母子だというのは、なかなか不条理な感じがした。
22時を回ってようやく帯広に到着。素早く宿に荷を降ろし、名門通りに並ぶ横丁のにぎわいを素見す。夜食には蕎麦の長寿庵に伺い、かしわせいろを啜る。帯広の飲屋街一帯の活気にも目を見張ったが、夜中の蕎麦屋が昼のオフィス街のような戦場ぶりで喫驚する。ぼけっと夜の町を廻りながら二匹ほど虫を口にして、久々に自分が口を空けて歩いていることを教えられた。セイコーマートの店頭では虫がバチバチ焼かれる音がしている。