Thursday, October 17, 2013

築地川



築地に行くため早めに家を出たので、有楽町で電車を降り、空也の最中を購う。若かりし大空真弓さんのようなおかみさんに、ちゃきちゃきと一箱だけ包んでいただいて、銀座7丁目からは真直ぐ築地へ歩く。そのまま正門から市場に入り、場内でアジ穴子フライ。やはり美味い。ターレを華麗に操る市場のお兄さん方がなんとも男前である。

築地から北へ向い、あかつき公園を過ぎるあたりで鳴り出した正午の聖路加の鐘が、どことなく不安げに聞こえる。京橋の方に少しそれて野暮用を済ませ、江戸橋を渡って津多屋の様子を確認。一週間経って一階ファサードは総はがしの状態となっている。東神田の方へ回って美倉橋を渡り、おかず横丁を過ぎてから、三味線堀を抜けたあたりで御徒町寄りに進む。



やはりハードな下町は良いなと思いつつ、多慶屋裏側から焼肉屋街へとディープ上野の一端をかすめて上野駅前まで歩き、高級喫茶古城で小憩。時間的に午後の打合せの頃合だったので、偉そうな上客の声などに少し胸を痛める。小半時ほど休んで、国立西洋美術館を訪ね、常設展のコルビュジェ特集を観た。クセナキスによる万博パビリオンのビジュアル・ポエムのプロジェクションが、コルビュジェの建物に投影されるというのは何とも贅沢なものである。曲はヴァレーズ。それにしても、やはりピカソの「ラ・ガループの海水浴場」の青がたまらない。



西洋美術館を出た後は、芸大を抜けて桜木に出るが、なんとなくオシャレになってしまったカヤバ珈琲をスルーすること2度目となった。街中のポスターで朝倉彫塑館がそろそろリニューアルすることに気付いたのは、このあたりを歩いた甲斐というものだろう。ギャラリーの汐花に向かうために地図を見ていると、すぐ近くに大名時計博物館の名前が目に入る。それは確かGMT47の谷中寮だったよなと気付き、しばし見学して行った。汐花では渡辺克巳と原芳市の写真展。渡辺克巳の歌舞伎町一番街の出前のコがなんともいい。また、80年の江戸アケミの姿、秋山祐徳太子の選挙ポスターなども見ることが出来た。

それにしても根津の町があまりに素敵なので、「殺伐としていない下町はいいな」とか、掌を返したように思ってしまう。何しろ、先ほどは好感を抱きつつも、あそこで自分が生き抜くことができるのか少し不安であったことだし…、などと考えるうち不忍池の西岸に戻り、帰路には上野公園前から小滝橋行のバスなどに乗ってみた。山手線内を横断する夕方のバスの所要時間は約1時間。小滝橋から東中野駅までは徒歩で12分ぐらいであった。