台風で乱れた交通機関はまだまだ復旧の気配を見せず、どうにも気も漫ろなまま、次は香川県立ミュージアムへと向かう。企画展の「たのしむ日本美術」は、東京のサントリー美術館コレクションということで、四国で見るものとしてはあまりありがたくはない気もするが、光琳が絵を付けた錆絵雪景富士図角皿など、乾山はやはりいいなと思わされる。汁注に使われる絵付の緑がまた何ともいい。展示室を屏風絵に移ってだらだらと歩き見ていると、老婆が一歩毎にオナラをしながら後ろを迫って来る。これは背後に回るわけにはなるまいと早歩きになる。威勢のいい老婆の行進はなかなか止まるところを知らず、しばし展示室を外してから、ゆっくりと英一蝶の吉原風俗図鑑を観た。ただし、場内の空気に心なしか違和感が残る。常設には、ハイレッドセンターの高松次郎の作品があって、へぇと思うが、高松と特に縁は無さそうなので、そのダジャレ感に尚更好感を抱いた。
16時を過ぎ、鉄道もバスも復旧しないので、この日は高松で台風をやり過ごすことにする。瓦町あたりの宿をとって、少しく憔悴しながら高松中央商店街を歩いていると、皇帝という素敵な感じのコーヒーサロンがあるので、人心地つけることにした。その後、予讃線は徐々に復旧していったが、あまり遅くまで混んだ列車に乗りたくもないので、改めて高松でゆっくりして行くことを心に決める。高松の巨大なアーケード商店街をそぞろ歩き、宮脇書店の本店に入る。せっかくなので、当地ならではの本を探すのだが、饂飩ばっかりでどうも引っかかるものがない。
投宿して羽を伸ばした後、瓦町駅前の「洋食おなじみ」にて美味いメンチカツ。食堂のテレビに流れていたニュースでは、天満屋が四国を撤退するという話。ということで、食後に天満屋を軽く覗いてみる。昭和38年から発売されているという名物かまどの菓子「フランソワ」が、その名も「かまどパイ」と改名したそうで、ここはひとつ貰って行くことにする。商店街に戻り、お客様わくわくデーのスーパーマルナカで、いくつかローカル食を物色。蠣三珈琲のドリップパックなんてものを見つけ、宿に帰った。