Thursday, October 24, 2013

宇和島駅



丸亀には正午前に着いたので、混合う前の麺処綿谷に駆け込んで、肉ぶっかけを堪能する。そのまま丸亀駅北側の新堀遊廓、福島遊廓あたりを歩き、わずかに残るカフェー跡などを目にしつつ、一寸島神社のバラック参道に拝す。廃業した旅館に残された看板が、商人宿であることを明記しているのを見るのは少し嬉しい。こちらではようやく金木犀の季節がやってきたようで、そこら中で甘い香りが立ち込めている。

そろそろ丸亀にも雨雲がやってきたようなので、この旅の目的である大竹伸朗展ニューニューを観に猪熊弦一郎現代美術館へ向う。まず目に入るのは、何はともかく宇和島駅のネオンサイン。谷口吉生による開放されたファサード上部に、堂々と突き出る様は、なんとも言えず凛々しい。これだけ駅前広場に面している美術館というのも、そうは望めない絶好のロケーションだろう。館内ではどのインスタレーションも音がたまらないのだが、エレベーターミュージックで奏でられる「こんぴら船々 追い手に 帆かけて シュラシュシュシュ」には、思わず脳がとろけそうになった。また、同時にライブラリーで公開していた選りすぐりの奇書にはコンディションが良くて感心させられる。自分が持っているものも一冊だけ、クラムの画集があった。

美術館はカフェの評判もいいようなのだが、気になっていた「名物かまど」喫茶部にて小憩する。こちらは和洋菓子店併設の喫茶部ではあるものの、なんだか妙に落ち着く喫茶室であった。一休みしてからはシャッターの閉まりがちな南口の商店街を少し歩く。商店が途切れたところで丸亀城。日本一高い石垣ということで、わざわざそんなもんには登らなくていいと思っていたのだが、麓に来てみると、あまりに馬鹿馬鹿しいぐらい高い上、ゾンコランかアングリルかというような阿呆らしい斜度を前に、ついつい登りだしてしまった。さらにこちらも阿呆なものだから、高いところにのぼるとやはり気持ちいい。本島や瀬戸大橋がすぐそこに見える。



ひとしきり駅周辺を歩いたところで、投宿して日没に備える。腹も減っていたが、5時まで粘り、ホテル側の中華屋で麻婆定食。店内はチャイニーズポップが流れ、チャイナの兄さんが一人で切盛りしている。18時までのランチで490円也。なかなか山椒のきいた麻婆である。暗くなってきた頃合を見て、駅前まで宇和島駅のネオンを見るため、店を出た。薄暮に煌めく宇和島駅、闇に浮かぶ宇和島駅のどちらも甚だ素晴らしい。駅前に出たついでにスーパーとキオスクを回ったが、目ぼしいローカル食は見当たらず。愛媛のらくれんカフェオレなどを購い宿に戻る。

部屋でゴロゴロしながら美術館で貰った『丸亀御案内写真帖』を開いてみると、何故か写真が沼田元気氏によるもの。いささか唐突な趣味だなという気もしつつ、微妙なモデルの微妙な感じがちょっといい。明日は土讃線から予土線と回って松山に行くつもりだったが、予想通り進んできた台風のことを考えると、無理せず予讃線で松山に直行するべきなのだろう。次第に雨音は激しくなってきた。